ベルト

高校進学のときに買ってもらった腕時計を
ずっと使っていた

銀色のベルトが
汚れていたことにも無頓着なまま
20歳になっても 
同じ時計を付けていたのは

時計は単に
電車に乗り遅れないように
制限時間以内に設問を解けるように
必要な道具だった、というだけのことだ

だから
初対面だったM叔父に
「古くなった腕時計を身につけた
地味なムスメ」
そう印象づけたことは 予想外で

そして なんにも見ていないようでいて
一瞬にヒトを アタシを判断したおじさんに
驚いたことをおぼえている

身なりとは不思議なもので
人柄をいぶし出す作用もあるのか

亡くなった田間の叔母に
19のときに言われて以来 
外出時に
つっかけやサンダルだのは 履かない

履いて来訪されるのも いまだに慣れない

過日 久しぶりに会った息子は
ひとさまの家を訪ねるからと
めずらしくスーツ姿であったが

腰のベルトは 皮がすれて
ところどころ 
うっすらと白地がみえていた

その様子に 母は心配もしたが
自立して生活をしている彼の
ありのままなのだと認めて
何も言わず別れた

だいぶん経ってから
そんな話を取るに足らぬ話を
夫にしたとき

彼もまた
「何も言う必要はないし
ましてや 安手な品でも買う必要はない」
そう私に 釘をさすように言った

見た目に くたびれたベルトは
当時のアタシと
今の息子と 
恥じる必要はないのだと教えてくれる
by f-sekkou | 2009-11-16 16:00 | ひとりごつ


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